「告白」
原作は、同名の09年度本屋大賞受賞作。
物語は、「私の娘は、このクラスの生徒に殺されたのです」という中学の女性教師のショッキングな告白からはじまる。
それに続く、事件関係者たちの告白。
単純な事件に見えた出来事が、語り手たちの告白によってさまざまな綾模様を描き出していく。
一種、芥川龍之介の「薮の中」にも似た構造の複雑なドラマを組み上げた作者、湊かなえのストーリーテラーとしての腕は確かに冴えている。
だが、この物語には、救いは最後まで訪れない。
その救いのない話を、やはりあまり救いのなかった「嫌われ松子の一生」を、一種のエンタテインメントに昇華させてみせた中島哲也監督がどう映画化しているのか…。
物語の筋立ては、ほぼ原作に忠実と言っていいだろう(原作の欠点ともいうべきエピソードなどはうまく語り変えているが)。ラストは原作にはなかったシーンがあって、むしろ原作以上に救いがなくなっているかもしれない。
映像マジックともいうべき中島監督の、あざといくらいの手腕は相変わらず見事なものだが、筋立てだけ抜き出せば、松たか子や生徒役の俳優陣の壮絶なくらいの演技がなければ、かなり辛いだけのものになっていたかもしれない。
映画も、原作の小説もある意味傑作であるとは思う。
だが、よく出来た面白い作品のその後味が、いつも心地よいという保証はどこにもない。
2010.7.24