二〇一〇年も、まもなく終わり。
映画界としては、黒澤明生誕百周年ということだったのだが、東京や大阪で上映会があったという以外あまり盛り上がりもなく過ぎた気がする。
政治的にも経済的にも浮揚感のないままに年の瀬が来てしまった。
では、まったくいい話がなかったかと、振り返ってみると、ひとつ明るいニュースがあった。
「天かける船」の物語だ。
といっても30数年も前の、宇宙空間を舞台にしたアニメが大金を投じて実写化されたという、そちらの話ではない。
「はやぶさ」。そう、小さな機体を駆ってはるばる20億キロの孤独な旅をして、幾つもの試練を乗り越え地球に帰還を果たし、あまつさえ、人類史上はじめて小惑星の物質を持ち帰るという偉業を成し遂げた小惑星探査機のお話だ。
「HAYABUSA BACK TO THE ARTH」
過日、上田市マルチメディア情報センターで上映会があって、満席の中かろうじて座ってみることが出来た。
全編CGで、しかも登場するのは、はやぶさと宇宙空間と小惑星だけと言ってもいい映画だ。
だが、これが泣けるのだ。ナレーションは、いささか情感過多で大げさだが、それがなくても本当に感動できるストーリーになっている。
機会があったら、是非ご覧になっていただきたい作品だ。
事実は小説よりも奇なりという言葉があるが、この壮大な物語に負けないだけの映画を、来年は見てみたいものだ。
2010.12.18