「新幹線大爆破」(75年)「カサンドラ・クロス」(76年)「暴走機関車」(85年)、そしてそれ以降も、暴走を始めた機関車や止めるに止められない列車を舞台にした映画は何本も作られてきたが、「アンストッパブル」は、裏に隠された陰謀や事件があるわけではなく、実際に起こった事故をベースにして、暴走する列車とそれを止めようとする人間の闘いを描いた、まことにシンプルな物語だ。
操車場で、運転手の手抜きとブレーキの操作ミスから、無人の列車が走り始めてしまう。
それは、最新鋭の貨物列車だったが、その全長八百メートルの車体には、大量のディーゼル燃料と毒性の高い化学薬品が積まれていた。
暴走を阻止しようとする鉄道会社の人間たちはさまざまな手段を講じるが、巨大なミサイルと化した列車は止まらない。
ちょうど、その時、同じ線路上を走っていた貨物列車のベテラン運転手フランクと新米車掌のウイルは、その列車を止めるべく追跡を始めたのだった。
リストラ間近の運転手と家族問題を抱えた新米車掌の人間ドラマも折り込まれてはいるのだが、この映画の主人公はまさに暴走する無人列車だと言っていいだろう。
走り出したら止まらない疾走感は最後までだれることなく、まさにアンストッパブルで映画は突き進んでゆく。
監督のトニー・スコットは、リドリー・スコット監督の弟だが、職人芸に徹した手腕は兄貴に負けていない。
2011.2.12