「犬神家の一族」(76年)が30年ぶりにリメイクされる。
角川映画の第一作であり、その後の横溝正史ブームの火付け役ともなった作品だ。
物語は、信州の製薬王、犬神財閥の創始者の遺言状をめぐって起きる悲劇の謎を、探偵の金田一耕介が解いてゆくというものだが、おどろおどろしい世界にもかかわらずどこか洒脱という相反する要素をないまぜにしつつ、市川崑が独特の感覚で描き出していた。
映画、テレビにと、金田一耕介ものは、片岡千恵蔵をはじめとして、高倉健から渥美清まで様々な役者が演じているが、やはりこの石坂浩二版を超えるものはなかった。
さて、その市川崑と石坂浩二のコンビが、再び組んで同じ作品をリメイクするというのだ。
市川監督は、90才というお年だから、見かけはすっかりいいお爺ちゃんという感じだが、石坂浩二の方は、多少老けて丸くなったとはいえ、あまり見かけが変わっていないのは、やはり驚異的なことではある。
そして、一方、30年という時間の流れは、ロケ地上田の姿をかなり様変わりさせてしまっている。
すでになくなった建物も多いし、柳町のように、つい最近整備されて、きれいな石畳になってしまったところもある。
暮らしの場としては、町が生活に便利になり、景観が整うのはうれしいことではあるのだが、反面「時代色」が次第に失われていくのは、映画の背景としては寂しいことでもある。
前回の作品のように、原作のままの昭和22年という設定はむずかしいような気もするが、その辺の料理は、市川崑の包丁さばきに期待することとしよう。
2006.4.22