(※このコラムは、2001年9月8日〜「週刊上田」に、不定期連載しているものです。では、ご笑覧あれ)
のっけからなんですが、あなたは、昭和33年の東宝映画「大怪獣バラン」を覚えておいでだろうか?
ふむ、ご記憶にない。
東北の湖から出現した怪獣が、空を飛び地に潜り、ついに東京は羽田空港に襲いかかるという、ゴジラ風の、でも今見るとお世辞にもいい出来とは言いかねるしろもの(ラストで、怪獣が照明弾を呑み込む場面の美しさと哀れさが、印象的ではありましたが)。
なぜ、そんな知らない人の方が多そうな映画を持ち出したのかといいますと、
それが、小学生になったばかりの記憶の蔵の一番奥にあって、どうやら映画体験の原点らしいからなんで。
大人になってからも、SFと聞くと、活字、映像に限らず食指が動いてしまうのも、そのせいかと…。
と、ここまで書いて気になって来るのは、いったい今の子供たちが、どんな記憶を心のスクリーンに焼きつけているのだろうか、ということ。
今年あたりだと、「千と千尋の神隠し」や「猿の惑星」だったりするのかな。
いずれにしろ、わたしの頃より技術的にはずっと進んだ映像を見られて、うらやましいのは確か。
でもね、忘れちゃいけないのは、新作「ゴジラ」みたいなリメイクものが、SF的な味つけにおいては旧作に遠く及ばなかったように、技術的な進歩が必ずしも映画の面白さにつながるとは限らないってこと。
大人とは、また違った視点で目にした映画の中から何を心にしまうのかは、その子の感性しだい。
さて、あなたの記憶の蔵にあったのは、果たして?
2001.9.8