「パンズ・ラビリンス(06年)」
ファンタジーというと、どうしても「ハリー・ポッター」や「ナルニア国物語」といった、家族一緒に楽しめるというイメージが強いけれど、それとはちょっと、いや、だいぶ雰囲気の違う映画がこれ。
「44年、スペイン内戦は終息したが、フランコ将軍の圧制に抵抗するゲリラたちは、山にこもって戦いを続けていた。
その最前線に、母親の再婚相手、フランコ軍のビダル大尉と暮らすために、オフェリアという少女がやって来る。
だが、そこに待っていた大尉は冷酷な男で、母親の体に宿った自分の息子にしか興味を示さず、オフェリアは孤独な日々を送る。
そんなとき、オフェリアは迷宮のなかで出会ったパン(牧神)に、彼女は地底世界の王女の生まれ変わりだと告げられたのだった」
こうして主人公のオフェリアは現実とも幻想とも付かない世界のなかに足を踏み入れていくのだが、そのゆくてに彼女を待っていたものは…。
いつも見ているようなファンタジー映画のつもりでスクリーンに向かっていると、かなりショックを受ける作品である(PG12指定)。
妖精たちの造形もかわいげはなくグロテスクであるし、それ以上に人間たちの織りなす現実の恐怖は、もっと救いがない。
にもかかわらず、これは「ほの暗い美しさ」に彩られた秀作だと言っていいだろう。
現実世界とオフェリアの幻想の世界が同時進行のかたちで並行して描かれているため、どっちつかずになる感じがあるのはもったいないが…。
2008.2.9