新しい学校へ、そして社会生活へと、若者たちの旅立ちの季節がやって来た。
だが、環境が変わったからといって、なかなか人間の中身までがらりと変われるというものでもない。
そんな若い子たちの、歯がゆいような日常を等身大に描かせたら、今一番うまいのが古厩智之監督ではないだろうか?
塩尻市出身。「灼熱のドッジボール」で、PPFアワード・グランプリを受賞してから、一貫して青春映画を撮り続けてきた。
「ロボコン(03年)」の長澤まさみ等々、新人を見いだす名人でもある。
ただ、彼の作品は、派手なアクションや、はらはらするようなサスペンスがあるタイプではない。
そのためか、なかなか大ヒットというわけに行かないのが惜しいところだ。
その古厩監督の最新作が「奈緒子」という高校駅伝をテーマにした作品。
「子どもの時、喘息の転地療養先の島の海で溺れかかった奈緒子。彼女を助けようとして、釣り船の船頭が亡くなってしまう。
その心の傷が消えぬままに高校生となった彼女が再会したのは、陸上の選手に成長していたその船頭の息子、雄介だった…」
原作は、人気コミックだそうだが、上野樹里や笑福亭鶴瓶は、原作のイメージとはちょっと違うらしい。
だが映画のなかの存在としての彼らにはなんの違和感もないから、むしろ原作を知らない方が素直に楽しめる作品なのかも知れない。
主演の上野樹里も雄介役の三浦春馬も良かったが、一番いい味を出していたのは、コーチ役の鶴瓶だった。
古厩監督の次回作は、麒麟・田村の「ホームレス中学生」だそうな。
2008.4.5