「第9地区」
宇宙人というと、おとなしめの「E.T.」タイプか、「凶暴きわまりない「エイリアン」タイプ、もしくは地球人そっくりといったところが相場だが、ある日、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に現れた巨大な宇宙船に乗っていたやつらは、どことなく「エビ」に似ていた。
彼らは、どうやら漂流者らしいのだが、理由はよく分からぬまま、とりあえず「第9地区」と呼ばれる難民収容地区に閉じこめられて20年が経過する。
その間に、知性はあるが野蛮で不潔な彼らと、まわりの住民の間では、次第に対立が激しくなりつつあった。
そんな事態を回避するべく、彼らを新しい収容施設に移住させるために、今やスラムと化した第9地区に交渉に向かったヴィカスだったのだが…。
舞台がヨハネスブルグであることからも分かるように、アパルトヘイトや難民問題を連想させる部分はもちろんあるのだが、「自分がその立場に立たされないと、どうしても理解ができないことがある」ということをするどく突きつけてくる作品だ。
監督は、これが長編デビューのニール・ブロムカンプ。登場人物も無名の俳優ばかりで、製作費も最近の大作からみればごく少ないのだが、ドキュメンタリータッチで、臨場感たっぷりに仕上がっている。
人間もエイリアンも遠慮なく殺されるし、気の弱いひとには少しきついところもあるが、見てけっして損はない一本だ。
2010.5.22