「十三人の刺客」(63年)
三池崇史監督によるリメイク版が作られたが、こちらは、工藤栄一監督によるオリジナル版。
江戸後期の明石藩藩主松平斉韶は時の将軍の弟である。だが、この藩主、異常な性格ゆえの暴政の限りを尽くしていた。
それを幕府に訴えようと、明石藩江戸家老の間宮が、老中土井大炊頭の門前で、抗議の切腹をするという事態にまでなったのだが、将軍は弟を猫かわいがりしていて、斉韶の暴虐は収まらない。
大炊頭は、ついに意を決して、腹心の目付、島田新左衛門に斉韶の暗殺を命じたのだった。
ストーリー展開といい、集団による闘争シーンといい、先に公開された黒澤明(東宝)の「七人の侍」(54年)や「用心棒」(61年)におおいに触発されたというか、対抗意識を燃やして作られたことは確かだが、それまでの東映のチャンバラ映画とはだいぶ趣が異なった作品になっている。
黒澤映画とはまた違った東映流リアリズムといった出来だが、出てくる俳優たちの風格や美術は、さすが時代劇の東映といった貫録だ。
嵐寛寿郎の殺陣はやはり息を飲むほどうまいし、後の黄門様とは全く違う剣の達人を演じる西村晃が実にいい味だ。また敵役ながら、明石藩士の参謀役を内田良平が貫録たっぷりに演じている。
新作はかなりスケールアップされている感じのリメイク版だが、そちらをご覧になったら、ぜひこのオリジナルの方も鑑賞されることをお薦めする(今年の「うえだ城下町映画祭」でも上映予定)。
2010.10.1