若い人、というか、ちょっとマニアックな映画ファンに人気がある映画監督のひとりが園子温。
最新作は「地獄でなぜ悪い」。
気の弱い青年が、ヤクザの娘に手を出して(という誤解から)、何故かヤクザ同士の出入りの映画を撮る羽目になっていくという、まあそれだけのお話と言ってしまってもいい筋立てのドタバタコメディー。
タイトルのイメージ通り、かなりドバドバと血糊が噴出し、切られた手足が飛び交うというスプラッターな場面が出てくる(これがないと園子温らしくないという程この手の演出が好きな監督ではある)のだが、あまりに派手なので怖さや気持ちの悪さを越えて笑ってしまうというレベル。
だが、映画の本題は、そのスプラッター場面にあるのではなく、映画を撮る人間の映画愛(まあ、かなり偏っているのかもしれないけれど)について熱く描いた作品だ。
園監督は、ぴあフィルムフェスティバルという、数多くの監督を生み出してきた若手作家の自主制作映画コンテストがきっかけで世に出てきた人(上田出身の「くじらのまち」の鶴岡慧子監督も昨年のグランプリ受賞者)。
「愛のむきだし」(08年)は、4時間近い長編だが、長さを感じさせないし、「冷たい熱帯魚」(11年)の冷酷な殺人鬼のでんでん(各映画賞の助演賞を総なめ)の使い方等、あまり形にとらわれない作風は、その辺から来ているのかもしれない。
ま、好みは分かれると思いますので無理にとは…。
2013.11.23