昭和29年 ゴジラがこの世に生まれた。
戦争、なかんずく核兵器の象徴としてスクリーンに登場した荒らぶる神は、時代とともにその背に負うものを変え、時には子供相手のピエロ的な存在にまで変質してしまったこともある。
いつしかゴジラは、台風と同じような「またやって来た災害」の地位に落ち着いてしまったかに見えた。
98年、はじめてハリウッド版の「GODZILLA」が作られたが、そこにいたのはゴジラに似た「大きな怪生物」でしかなかった。
エメリッヒ監督には「怪獣」という概念と「ゴジラの存知の意味」は余り興味がなかったようだ。
そして、今年、再びハリウッド版の「GODZILLA」が登場した。
99年、芹沢猪四郎博士は、フィリピンで驚くべき化石を目にする。同じ年、日本の原発で働くジョーは、そこで起こった事故により妻を見殺しにせざるを得なくなってしまう。
それから15年、ジョーの息子フォードは、父親が日本の原発事故跡の立ち入り禁止区域で逮捕されたと知らされ、急遽日本に向かうことになった。
再び、立ち入り禁止区域に進入して捕まった親子が、そこで目にしたのは…。
若手の監督、ギャレス・エドワーズは、しっかりと「ゴジラ」の持つ意味をとらえているようだ。
広島、ビキニの水爆、福島原発という、人間には御することのできない負の遺産の象徴として、ゴジラはみごとに原点の姿を取り戻し、再び神話世界での闘いを開始しようとしている。
2014.8.16