昔からの活字SFファンが、海外作品のオールタイムベストを選ぶとき必ず候補に上がってくる何冊かの本がある。 例えばアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」などだが、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」も、そんななかの一冊。
主人公のダンは、ロボットの開発者で、親友のマイルズとともに家事用ロボットを売り出して大成功を収める。
マイルズの義理の娘の少女リッキィや相棒の猫ピートと、楽しく順風満帆な日を送っていたかに見えた。
だが、マイルズと秘書のベルの裏切りにあい、すべてを失った上に冷凍冬眠で30年後の世界に送られてしまう。
果たして彼の運命は。そして子供だったリッキィやピートはどうなったのか。
タイトルの「夏への扉」というのは、猫のピート(おそらくSFの世界で最も有名な猫だろう)が、冬でも探し続けている夏へと続く扉のことだ。
その物語が、日本を舞台にして映画化された。
「夏への扉 キミのいる未来へ」
正直、この手の海外のSF作品の映画化が日本でうまくいった試しはあまりないから、ほとんど期待せずに見に行ったのだが、それは嬉しい方に裏切られた。
現代の日本を、少し歴史の違う(例えば、三億円事件の犯人が捕まっていたりする)、パラレルワールド的な世界にして、重要なオリジナルのキャラクターを加えつつも、原作の物語を大切にしてなかなかうまい翻案作品にしてくれている。
2021.7.31