細田守監督の最新作。
「竜とそばかすの姫」
「サマーウォーズ」のネット上の世界「オズ」の発展版とも言える「U」。
そこで、世界的な人気の歌姫となった、現実の世界ではごく目立たない田舎の女子高生のすず。
彼女が、「U」のなかで出会った荒ぶる「竜」とは、一体何者なのか。
いかにも細田ワールドといったネットワーク上のバーチャルな世界と現実世界とをめぐる冒険の物語。
ある意味、これまでの細田守作品の集大成といった趣のある1本になっている。
その分、物語の構成としては、少し新鮮味に欠けるきらいはあるものの、映像の美しさと音楽はやはり素晴らしい。
そして、これは、監督も言っているように細田版の「美女と野獣でもある。
「美女と野獣」は、1740年、フランスのヴィルヌー夫人によって書かれた異類婚姻譚で、その後いろいろな形で映像化されている。
今、一番人々に知られているのはおそらくディズニー版のアニメだろう。
最初に映画化したのは、詩人でもあるジャン・コクトーだったが、今見ると素朴な特撮もあって、微笑ましい感じでもある。
謎めいた古城に住む野獣の怒りに触れた商人の代わりに野獣のもとに赴いた娘。
その娘ベルによって野獣の心は癒され、ついに野獣は人間の姿を取り戻すという、ある意味古典的なパターンのおとぎ話の世界。
そのおとぎ話とは違う現実の世界の中で、すずは野獣の心を鎮めることができるのだろうか。
2021.8.28