06年の邦画を振り返ってみると、一番の収穫は、やはり「フラガール」だろうか。
常磐ハワイアンセンターが立ち上がるまでの舞台裏を、脚色をまじえながら描いたこの映画は、単なるプロジェクトXものの枠を超えた面白さをスクリーンにひろげて見せてくれた。
脚本の良さもあるが、何といってもフラダンスが本物になっているのが最大の成功要因だろう。
同じような骨組みの「スウィングガールズ」(04年)もそうだったが、俳優陣がごまかしのきかないところで勝負してくれる潔さがあると、やはり映画のテンションも上がるのである。
年末の話題作というと、山田洋次監督の藤沢周平三部作「武士の一分」だが、同じ時代物でもだいぶ趣が違うのが年明け公開の手塚治虫原作「どろろ」。正直言うと、個人的には実際に見るまでは期待半分不安半分といった気分でいる…。
それは、これまで実写で映画化された手塚治虫原作の漫画の多くが、あまり成功してきたとは言えないからだ。
手塚治虫は、それまでの「漫画」に映画的表現を取り入れて、日本の(ということは「世界の」ということにも通じるのだが)漫画的表現を、根元のところから変えてしまった人である。
その人の漫画が、実写化されるとなぜあまりうまく機能しないのか?
わたしは、手塚治虫は、漫画家としての面以上にストーリーテラーとしてもっと評価されていいのではないかと思っている。
彼の作り上げてみせた壮大な世界観を、そのままスクリーンに紡ぎ出すには、原作が「漫画」だという意識が一番のじゃま者になっているような気がするのだが…どうだろう?
2006.12.23