今年も、アカデミー賞が決まって、映画界の最大のお祭りもひと段落。
最多ノミネートで話題だった「ロード・オブ・ザ・リング」は、主な賞からは外れ、ロン・ハワード監督の「ビューティフル・マインド」が作品、監督賞ほかに輝いた。
ひとりの天才的数学者の心の迷路と、彼を支え続けた妻の愛と苦悩をサスペンスを交えて描いた物語だ。
主人公を美化しすぎだという意見もあるようだけれど、映画が映画として成立していれば、とくに問題にすることでもないと思う。
数学者ナッシュ・ジュニアのほんとの人生なんて、わたしは知らなかったけれど、映画の面白さにはなんの影響もなかったものね。
で、中で一番感心したのは、登場人物たちの老けぐあいの見事さ。
観客の気づかないSFXこそ本物のSFXだ、と言われるけれど、加齢の特殊メイク(何も、怪物のマスクだけが特殊メイクではないのだ)も例外ではない。
いまだに、ときとして不自然に見える日本映画の老けメイクに比べて、アメリカ映画のそれは、別の役者なのかな?と思わせるほどにごく自然にできている(もちろん、演技力がなくてはどうしようもないけれど)。
こういった、細かい部分のリアリティーがあってこそ、はじめてフィルムの世界に深みが生まれてくるのだと思う。
日本の監督のなかで、そういったSFXの使い方のツボを、一番心得ていたと思われる伊丹十三がもういないのは、やはりなんとも残念なことなのだ。
2002.4.27