05年のテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」で、若い人の間ににわかに落語ブームが訪れた。
その波もだいぶ引いたかに思われたけれど、NHKの連ドラ「ちりとてちん」の好調さも手伝ってか、また落語に興味を持つ若者が増えているという。
役者が噺家を演じると、肝心の落語の場面がちっとも面白そうに見えないことが多いのだが、高座より楽屋風景が多かった、マキノ雅彦初監督作品の「寝ずの番(05年)」は、演者たちの好演もあってなかなか面白かった。ただ、下ネタのオンパレードなので家族そろって、といかないのが難点。
そこへ行くと、安心して見られて、しかも面白いのが「しゃべれども しゃべれども(07年)」だ。
「落語にはひと一倍情熱を持っているのに、もうひとつ自分の芸がつかめずにもがいている、二つ目の今昔亭三つ葉。
そんな彼の元に、ひょんなことから、美人だが無愛想で人と付き合えない女と大阪から転校してきて友だちが出来ない小学生、そして口下手な野球解説者が、落語を習いにやって来ることになったのだが…」
佐藤多佳子の原作小説が面白かっただけに、主人公が国分太一と聞いたときには、一抹の不安もあったのだが、これがなかなかにいい味を出している。
伊東四朗の(多分に志ん生を意識した)噺家ぶりもお見事だったが、無愛想な娘を演じた香里奈も口下手な元プロ野球選手の松重豊も役にはまっている。
そして、誰より素晴らしかったのが、枝雀の「火炎太鼓」を演じて見せた子役の森永悠希。
面白くてさわやかなお話でございます。
2008.3.22